2022.04.15
【平屋一戸建】夏は暑くて冬は寒いって本当?家作りのプロが徹底解説!
階段などの段差が少ないバリアフリーなつくり…広々としたワンフロアの間取りで 定期的に家族の顔を見ることが出来る住まい…そんな暮らしを実現できる住居として、近年人気を集める平屋建て。
しかし おばあちゃんの家や実家など、いわゆる「昔ながらの平屋」に対し、夏は暑い・冬は寒いといったイメージを持たれている方、多いのではないでしょうか?
今回は、暑くなりがち・寒くなりがちな 平屋特有の原因を解説するとともに、季節を問わず快適な平屋暮らしを叶える方法を紹介します!せっかく平屋を建てるなら、長く住みたいし心地よい住まいにしたい!とお考えの方、ぜひご参考ください♪
1.平屋が暑い原因①屋根から伝わる熱
平屋が暑い原因の1つが、屋根から伝わる熱。2階建てと比べると、平屋は屋根の表面積が広くなる傾向があります。屋根の面が広ければ広いほど、夏の照りつける日差しから熱も受け取り、その熱さが室内へ入ってきやすくなります……。
そもそも熱の伝わり方は、輻射(ふくしゃ)、伝導(でんどう)、対流(たいりゅう)の3種類があります。
真夏の車で例えると
「フロントガラスから太陽光が入り込み、ダッシュボード・ハンドルが熱される」=輻射
「輻射により車体が温まり、車全体に熱が広がる」=伝導
「車体から車内の空気に熱が伝わり、車内の空気を温める」=対流
……と、熱がそれぞれ伝わることにより、車体本体から車内まで暑くなります。
外から建物へ伝わる熱の7割以上を占めるのが、この中の1つの「輻射」。輻射熱(ふくしゃねつ)とも呼ばれており、「空気や水などの透明なものを通過する」「温度の高い場所から低い場所へ移動する」「金属や鏡に当たると反射する」といった性質を持ちます。
ここで多くの方が「それなら、屋根の断熱施工さえしっかり行っていれば、輻射熱の影響を受けないハズ!」と考えてしまうのですが、断熱材の素材によっては家の中が熱くなってしまうケースがあるんです!
断熱材としてスタンダードかつお手頃な、グラスウールなどの繊維状(せんいじょう)断熱素材は、間に空気層があります。輻射熱は空気を通り抜けますので、屋根から断熱材部分に熱が入り込みます。輻射熱は温度の高い場所から低い場所へ移動する特性があるため、屋根の断熱材部分から涼しい室内へジワジワと熱が移り、結果 部屋の中が暑くなってしまいます……。
2.平屋が暑い原因②風の通りが悪い
平屋が暑い2つ目の原因は、風通しの悪さ。
ご存知の通り、温かい空気は上へ行き 冷たい空気は下へ溜まります。この性質を利用し、風の入口は住居の低い位置へ、風の出口は住居の高い位置へ設定すると、効率よく換気を行うことができます。これを、重力換気と言います。
2階建ての住まいでしたら、そんな換気に特化した窓を1階・2階へそれぞれ設置できますが、1階部分しかない平屋の場合は どうしても空気が滞ることに……。
平屋=風通しが悪いというならば、夏場は換気重視で常に窓を開けておけば!あらかじめ窓を大きく・たくさん作っておけば!
なんて 手軽に考えてしまいそうですが、いくら窓をたくさん設けたり大きな窓を作っても、風の通り道を意識した間取りでなければ、「風通し」は良くなりません……。風通しが悪いためにエアコンに頼りっぱなしとなる夏の平屋は、空気がよどみ、湿気まで加わるとジメジメとした居心地に!
3.平屋が寒い原因①日当たりが悪い
平屋が寒い住まいとなってしまう原因の1つが、日当たりの悪さ。
2階建ての場合、言うまでもなく2階部分は採光に困りません。また、吹き抜けなどを活用して2階から1階へ日光を届けることが出来ます。いっぽう1階部分しかない平屋は、間取りが込み入れば込み入るほど家の中央に太陽光が届きにくくなります。
「じゃあ天窓があれば、天井から自然光をいつでも取り入れられる!」「南向きの窓があれば冬場寒くなさそう♪」と、お考えの方もおいでかと思いますが……。
雨や台風、雪の多い地域では、天窓には雨漏りの心配が必ずと言っていい程つきまといます。南向きの窓に至っては、冬場はお日さまポカポカですが、夏場は逆に日光との戦いを強いられることになりそうです。
4.平屋が寒い原因②床下からの冷気
平屋建ては地面に接する面積が広い分、床下からの冷気の影響を受けやすく 底冷えする・寒い住まいになりがちです。例として、延べ床面積(のべゆかめんせき/建物の床部分を全て足したスペースのこと)を揃えた、2階建てと平屋を比較してみましょう!
ご覧の通り、住まう広さは同じにもかかわらず、平屋建てのほうが地面に接する面が多くなります。地面に接する面が広いほど、冬場の冷気が床から入り込みやすくなることに!
「平屋は床から冷えると言うならば、床暖房の設置で解決できそう!」と、安易に考えるのは要注意です。床暖房は、スイッチONから温まるまでに1時間前後かかることがほとんど。
起きるのだけでも心構えがいる冷え込んだ朝でも、木枯らし吹く外から帰って来た冬の日でも、足元が温まるのは1時間後……。せっかく平屋を建てたのに、そんな寒々しい暮らしは避けたいですよね。床暖房に頼らずとも、平屋の床冷えを解消できる方法を 次の項目で詳しく解説します!
5.暑くない・寒くない平屋建てにするには?
暑くなりがち、寒くなりがちな原因を多く持つ平屋……。季節にかかわらず心地よい平屋暮らしを実現できる方法を2つ、ご紹介します!
■快適な平屋暮らしのために①:熱対策を万全に
2階建てよりも屋根の面積が多いため、夏は輻射熱で暑くなってしまう……。地面に近いがために、冬は床下からの冷気で寒くなってしまう……。そんな平屋特有の困りごとを解決するには、「遮熱(しゃねつ)」「外断熱(そとだんねつ)」「基礎断熱(きそだんねつ)」の3つをベースとした家づくりをオススメします!
熱対策① 遮熱
遮熱とは文字通り、熱を遮ること。
輻射熱は「金属や鏡に当たると反射する」といった性質を持っています。そのため、金属素材が含まれた断熱材を用いるだけで、屋根・外壁から屋内に入り込む太陽の熱を ほぼシャットアウト可能に!猛暑日とも熱帯夜とも無縁の、住みよい平屋が実現出来ちゃいます♪
熱対策② 外断熱
遮熱とセットで取り入れたいのが、外断熱。
オーソドックスな断熱方法として知られる内断熱ですが、屋根と柱の間、柱と柱の間に断熱加工を施すため、断熱材と屋根・柱の間にどうしても小さなスキマが出来てしまいます。結果、断熱加工されていない柱の部分・取りこぼしたスキマが 外気の影響を受け「夏は暑い・冬は寒い平屋」に……。
外断熱の場合、屋根から基礎まで外側からすっぽりと包み込むような工法のため、焼けるような暑さはもちろん、凍えるような寒さにも負けない平屋を叶えます!
熱対策③ 基礎断熱
平屋特有の底冷えには、基礎断熱が有効!
家の下側の断熱方法として、床断熱と基礎断熱のいずれかが採用されます。床断熱とはその名の通り 床に断熱加工を施すため、床下は「外」。寒風吹きすさぶ季節になると、床下は常に冷たい空気にさらされることに
それに対し基礎断熱は、家の土台となる基礎部分に断熱処理を行うため、床下はお部屋の「中」と同じ環境。外からの冷気が床下に入り込む心配がなく、床冷え知らずの平屋に。寒さ厳しい北海道では、この基礎断熱で建てられた一戸建てが半数近くに上ります!
これら3つの熱対策を組み合わせることで、真夏・真冬に多い「冷暖房の効いてない部屋は暑い・寒い」といった部屋間の温度差も発生しにくくなり、エアコンなどの冷暖房効率もUP!光熱費節約の嬉しい効果も見込めます☆
■快適な平屋暮らしのために②:間取りにこだわる
「平屋は、風通し・日当たり面で2階建てより悪くなりそう……。」と、なかば諦めかけている方いませんか?実は 間取りを工夫するだけで、風通しも採光も手に入れることが叶います!
光あふれる平屋を目指すならば、【コの字】【ロの字】やといった間取りを推奨します。
文字通り コの字もロの字も中庭を囲うような間取りをしているため、当然のごとく日当たりは良好♪さらに道路側の窓を減らすことが出来、外から庭へのアクセスも限られるため防犯効果も併せ持ちます!
また、風通しの良い平屋にするには 【風の通り道を意識して窓を設ける】のがマスト!1つ窓を設置したら、その反対側や対角線上にもう1つ窓を作りましょう。空気の循環を意識しつつ、壁や家具で風の行方を邪魔することが無いようご注意を!
さらに、窓の種類も重要です。横にスライドするタイプの窓では、風が素通りしお部屋の中に入らないことも。片開き窓など、風を取り込みやすい窓にすると より効率的に風の出入りを促せますよ♪
☑平屋が暑い原因は「屋根から熱が伝わる・風通しが悪い」から。
☑平屋が寒い原因は「日当たりが悪い・床下から冷気が入る」から。
☑涼しい・暖かい快適な平屋には【熱対策】と【間取りへのこだわり】が必須!
気持ちよく・長く・健やかに住める平屋のためにも、熱中症やヒートショックなど暑さ・寒さを原因とした「家庭内のもしも」を防ぐためにも、こちらの記事が参考になれば幸いです。
津田 洋平(一級建築士)
悠悠ホーム株式会社 建築プランナー
家は、お客様にとっては人生最大のお買い物。
建築プランナーの仕事はそんなマイホームに託すお客様の「夢」を図面化すること。
打合せの際には、建築士としてのプロの目と、住む人の目線に立って考えることを大切にしています。
満足いただけるよう一軒一軒が真剣勝負だと思って、ご提案とご説明を尽くすことを心掛けています。
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